続きますと言いつつなかなか続けられなかった辞書に関する話、続けます。
カルチャーでの翻訳講座では、バカロレアについてのエッセイにつづいて、ミシェル・トゥルニエの短編「Les deux sœurs」を読んだ。
で、まず意外なことにというべきか、文学テクストを例にとって辞書を引き比べてみた場合、ジャーナリズム風の文章の時にくらべて、ずっと辞書の間の差が目立ちにくかった。学習仏和を使った場合でも、中辞典、大辞典とくらべて、とくに不都合は感じられなかった。 s’en remettre à(~に頼る、まかせる)、jeter son dévolu sur(~に白羽の矢を立てる)、prendre son parti de(~をあきらめて受け入れる)のような成句だけでなく、Va (Allez) savoir(そいつは分からないな)のような口語表現、「Aide-toi et le ciel t'aidera」(天は自らを助くるものを助く)のような諺、Corbeille [de mariage](男がフィアンセに贈る贈物)のような特殊な語義を、どの学習仏和でも調べることができたのである。フランス語初級者が買うように勧められるこれらの辞書で、トゥルニエの短編のこの2ページほどの抜粋をほぼ完璧に読むことができたのだ。
これはどういうことか。トゥルニエという作家の「古典的」性格のためか。おそらくそれだけではないと思う。
ちなみに、上に挙げた表現の大部分は、Le Petit Larousseには載っていない。だからわれわれのまわりにある学習仏和辞典がどれもこれらの表現を網羅していることは、けっして当たり前のことではない。むしろ驚くべきことなのである。前回触れたように、これらの辞書がフランス語の現用に合わせた改良を行いつつあるのは事実としても、こうした辞書はまずそれ以前にやはり文語志向、文学志向であり、そのような観点からみてもきわめて質の高いものなのだ。
そんなことを考えているうちに、カルチャーでフランス語初級講座が始まった。聴講者の方々が求めているのは、ディコやプチ・ロワイヤルですらなかった。これらはもうすでに、大きすぎ、重すぎ、複雑すぎるのである。かといってロワイヤル・ポッシュは勧められない。
仏和辞典は他にも素晴らしいものが各種ありますが,仏検3級程度まではこの辞書を徹底的に使い込んで基礎を固めるのもいい方法だと思います。その上で,中上級向けの仏和辞典や仏仏辞典,さらには手頃な電子辞書を購入するというのが,最も現実的な選択だと思います。学習者用仏和をめぐる状況は様変わりしている。あるいは、このような、本当の意味で「学習者用」の良い辞典が充実しているような状況こそ望ましいのかもしれない。
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