昔は、本格的にフランス語を勉強するなら早い段階から中辞典を使えというのが常識だった。今でも基本的にそれは変わらないのだろうけれど、でもちょっと事情が変わっている気がする。翻訳の仕事をするようになってから、改めて仏和をよく使うようになった。教師になったので、辞書についてのアドバイスをしなければならなくなった。学習者用仏和をいろいろながめてみた。仏和辞典をめぐる状況は様変わりしていると思う。
まずは、何があるのかリストにしてみた(参考はこちら)。
- 学習仏和辞典
『プログレッシブ仏和辞典 第2版』、小学館、2008年3月、3780円(税込)。
『クラウン仏和辞典 第6版』、三省堂、2006年1月、3900円。
『Le Dico 現代フランス語辞典』、白水社、2003年3月、3800円。
『プチ・ロワイヤル仏和辞典 第3版』、旺文社、2003年1月、3885円。
『白水社 ラルース仏和辞典』、白水社、2001年、4200円。
『ジュネス仏和辞典』、大修館書店、1993年、3500円。
- 仏和中辞典
『ロワイヤル仏和中辞典 第2版』、CD-ROM付、旺文社、2005年2月、6300円。
『新スタンダード仏和辞典』、大修館書店、1987年、3914円。
- 仏和大辞典
『小学館ロベール仏和大辞典』、小学館、1988年、28000円。
『仏和大辞典』、白水社、1981年、28000円。
とにかく、学習仏和のカテゴリーの充実ぶりがすごい。逆に言えば、中・大辞典の所のさびしさが目立つ。「ロワイヤル」と「小学館ロベール」は、不動の大関、横綱という感じだけれど、不幸なことにライバルがいない。(「スタンダード」と「白水社大辞典」はすでに引退というべきか。)ライバルがいてこその切磋琢磨が、このレベルには存在していない。残念。
学習仏和の今の興隆の牽引力の一つになったのは、明らかに5年に一度ずつの改訂を重ねてきた「クラウン」のまじめさとバイタリティー。それも、ただ新語を取り入れるだの、語彙を増やすだの、表層的な改良にとどまらない。使いやすい辞書をめざして、一般的な単語に関しても訳語の工夫を重ねている。あとは「ディコ」の登場も大きかったのだろうと思う。初版当時は、それまで「たぶん」、「おそらく」とされてきたpeut-êtreに、はじめて「…かもしれない」の訳語をあてたなどというのが話題になりました(「たぶん」なら、probablementだものね)。「ディコ」はそういうところのセンスがよい。「プチ・ロワイヤル」は、兄貴の良いところを受けついでいる上に、ほかの辞書もよく研究しているという気がする。
学習仏和のリストにあるもののうち、上の4つは甲乙つけがたい。収録語数が8000の「白水社ラルース」は引くための辞書ではなく、読むための辞書だから種類が違う。じゃあ、初学者が買うならどれがいいのか。個人的には、比べてみた結果、「ディコ」か「プログレッシブ」がいいと思った。「クラウン」や「プチ・ロワイヤル」は、これ一冊でまかないたいという人の要望に答えようという欲がある気がする。そのために収録語数が多すぎて、用例のためのスペースが犠牲になっている。
この話題、しばらく続きます。
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