2010年5月5日水曜日

単純過去の活用型と語幹

そうこうしているうちに、二年生の講読がはじまる。さっそく、単純過去を教えなければならない羽目に。

というわけで、単純過去についてここにまとめておきます。

単純過去の活用語尾には、以下の三つ(あるいは三つ半)の活用型がある。

  1. a型:- ai, - as, - a, - âmes, - âtes, - èrent
  2. i型:- is, - is, - it, - îmes, - îtes, - irent (in型:- ins, - ins, - int, - înmes, - întes, - inrent)
  3. u型:- us, - us, - ut, - ûmes, - ûtes, - urent
動詞の不定詞語尾と単純過去の活用型との間には密接な関係がある。
  • -er動詞は、allerを含め、a型。
  • -ir動詞は、ほぼつねにi型。例外は、u型になるcourirとmourir。また、venirとtenirはin型になる。
  • -oir動詞は、ほぼつねにu型。例外は、i型になるvoir、asseoir、surseoir。
  • -re動詞は、多くの場合i型。しかしu型もかなりある。たとえば、vivre、lireなど。
多くの参考書がこの関係について触れているが、例外まで明記しているものはわずかである。(とくに新倉俊一、『問題本位 フランス文法』、白水社、56~57頁。また、島岡茂、『フランス語統辞論』、大学書林、「ねね先生のフランス語初級文法講座」も参考になった。

「ロワイヤル」末尾の動詞活用表で確認してみたが、-ir動詞と-oir動詞について上に挙がっている以外の例外は見つからなかった。ただ、haïrでは、j'haïs、tu haïs、il haïtとつねにトレマが現れ、複数形も、nous haïmes、vous haïtes、ils haïrentとなって、nousやvousのところでもアクサン・シルコンフレックスが付かない。

単純過去の活用を覚えるとは、それぞれの動詞について、それが単純過去において、どの活用型、どのような語幹をとるのかを覚えることにほかならない。すでに見ているようにある程度の規則性があるが、万能ではなく、個々の動詞について学んでいかなければならない。一番効率の良い覚え方は、個人的には三人称単数形を覚えることだと思っている。この点についてはまたあとで触れる。結局覚え方は人それぞれだが、とりあえず、以後単純過去を書くときには三人称単数形で代表させることにしよう。

語幹のつくりかたに関しては、参考書によって説明がまちまちである。
  • -er動詞は、-erを取る。これはどの参考書でも変わらない。活用型は前述のようにつねにa型。
      • donner → il donna 
      • aller → il alla
  • -ir動詞は、-irを取る。-er動詞以外では過去分詞から作られる場合が多いとしてお茶を濁している参考書もあるが、-ir動詞ではこれがあてはまらないものがかなりある(ouvrir、offrir、vêtir)。原則として不定詞から-irをとってi型と覚えた方がよい。
      • finir → il finit
      • partir → il partit
      • dormir → il dormit
      • sentir → il sentit
      • accueillir → il accueillit
      • ouvrir (ouvert) → il ouvrit
      • couvrir (couvert) → il couvrit
      • offrir (offert) → il offrit
      • vêtir (vêtu) → il vêtit
    •  あとはacquérir、conquérirだけ気をつければ良いようである。この場合は、過去分詞から作らなければならない。
      • acquérir (acquis) → il acquit
      • conquérir (conquis) → il conquit
    • 前述のように、venirとtenir、およびこれらから派生した動詞はin型になる。
      • venir → il vint 
      • tenir → il tint
      • devenir → il devint
      • retenir → il retint
      • u型になるcourirとmourirは別個に覚える。
        • courir → il courut
        • mourir → il mourut
    • -oir動詞、-re動詞は、多くの場合過去分詞から作れる。この最後のカテゴリーについてこれ以上突っ込んだ説明をしている参考書は見あたらないが、場合分けして分析してみるとさらなる法則めいたものが浮かびあがってくる。以下、個人的に気づいたことをメモした上で、それぞれにあてはまる例を挙げておく。
      •  -oir動詞では、単純過去の生成は概して非常に規則的である。-oir動詞の過去分詞は原則としてuで終わる(石野好一、『フランス語の入門』、白水社、127頁)ので、これをそのまま生かしてu型の活用語尾をつけていけばよい。
        • savoir(su) → il sut
        • recevoir (reçu) → il reçut
        • pouvoir (pu) → il put
        • vouloir (voulu) → il voulut
        • valoir (valu) → il valut
        • falloir (fallu) → il fallut
        • pleuvoir (plu) → il plut
        • devoir (dû) → il dut
      • ただし前述のi型になる動詞voir、asseoir、surseoirについては、別個に覚える。
        • voir → il vit
        • asseoir → il assit
        • surseoir → il sursit
      • -re動詞のなかでu型の活用になるものは過去分詞がuで終わる動詞であり、例外は見あたらない。この場合も、単純過去の生成は-oir動詞の時のように行う。
        • vivire(vécu) → il vécut
        • lire (lu) → il lut
        • croire (cru) → il crut
        • boire (bu) → il but
        • connaître (connu) → il connut
        • apparaître (apparu) → il apparut
        • résoudre (résolu) → il résolut
        • plaire (plu) → il plut
      • ただし、-re動詞のなかには過去分詞がuで終わっていてもu型の活用にならないものがある。この場合、単純過去の生成はuをとった上で、i型の活用語尾を付ける。
        • attendre(attendu) → il attendit
        • rendre (rendu) → il rendit
        • perdre (perdu) → il perdit
        • battre (battu) → il battit
        • vaincre (vaincu) → il vainquit
      • -re動詞で過去分詞がuで終わらないものはつねにi型の活用になるが、これを語幹の成り立ちの点からさらに3つのタイプに分類できる。まずは過去分詞から語幹を作れるもの。
        • mettre (mis) → il mit
        • prendre (pris) → il prit
        • dire (dit) → il dit
        • rire (ri) → il rit
        • suffire (suffi) → il suffit
        • suivre (suivi) → il suivit
      • つぎに語幹が過去分詞でなく、直説法現在複数形と関わりがあるもの。
        • écrire → il écrivit
        • conduire → il conduisit
        • atteindre → il atteignit
        • éteindre → il éteignit
        • craindre → il craignit
        • joindre → il joignit
      • 最後に、まったく特殊な語幹を持つもの。
        • faire → il fit
        • naître → il naquit

    0 件のコメント: